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ベトナムでの人材採用の基本戦略|日本人管理者が知るべき違いと成功のポイント

  • 執筆者の写真: k.nuisach
    k.nuisach
  • 2月7日
  • 読了時間: 10分

更新日:2月10日

現地工場を任された日本人管理者が「人材を採用しなければならない!」と考えたとき、多くの場合、「人材紹介会社に依頼すれば解決する」と結論づけてしまいがちです。しかし、それだけでは将来的に組織運営が難しくなり、属人化やブラックボックス化といったリスクを招く可能性があります。特に、管理職の採用経験がない現地管理者にとっては、適切な人材戦略を構築することが大きな課題となります。


本記事では、日本とベトナムの人材に関する基本的な違いを整理し、日系企業がベトナムでの採用で陥りやすいポイントを解説します。単なる採用手続きにとどまらず、将来的な組織運営を見据えた適切な人材の選び方について、具体的なアドバイスを提供します。


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【目次】



1. 人材採用における基本的な前提

ベトナムに進出する日系企業の多くは、日本国内での採用基準や感覚をそのまま適用し、現地のベトナム人採用を決定してしまうケースが少なくありません。しかし、このような採用方法では、双方の認識のズレが生じやすく、せっかく採用した人材が短期間で退職してしまうことも珍しくありません。


本章では、日本とベトナムにおける人材採用の根本的な違いを整理し、日系企業がベトナムでの採用で陥りやすいポイントについて解説します。現地での適切な採用戦略を構築するための基礎知識を提供し、企業が直面する課題を回避するための指針を示します。


1-1. 日本人の採用感覚を見直す

まず、日本とベトナムでの人材採用に対する考え方の違いを理解することが重要です。文化や価値観が異なるからこそ、それに応じた適切な採用アプローチが求められます。


特にベトナムでは、管理部門(経理・人事・総務・調達など)の役割を日本と同じ感覚で捉えるのは誤りです。日本では「管理部門は誰が担当しても同じ業務を行う」「直接利益を生まないため重要度は低い」と考えられがちですが、ベトナムでは事情が異なります。現地に日本人管理者を1人しか配置できない場合、管理部門の役割はより重要になり、特に経理(お金)や人事(人材管理)には高い専門性が求められます。


1-2. 日本人の採用に対する考え方と課題

日本人は「良い人材を採用したい」と考えますが、その見極めは決して簡単ではありません。その理由として、以下の点が挙げられます。


  • 履歴書や面接だけでは仕事の能力を判断しにくい

  • 言語や教育、文化、経済環境が異なり、日本人と単純に比較できない

  • 個人の能力差が日本の基準以上に大きく、想定しにくい


特に注意すべき点は、日本語レベルと仕事の能力が必ずしも比例しないことです。日本語が堪能な人材を採用したものの、実務能力が期待と異なり、ミスマッチが生じるケースがよくあります。


1-3. 日本人とベトナム人の働き方の違い

日本とベトナムでは、仕事に対する考え方や行動に明確な違いがあります。以下の点に留意することが重要です。


契約書の認識の違い

日本人は労働契約書を細かくチェックしないことが多いですが、ベトナム人は内容を詳細に確認し、権利や利益を主張します。


時間に対する考え方の違い

日本では「8時始業=8時に仕事開始」ですが、ベトナムでは「8時までに出社すればよい」と考えられることが一般的です。そのため、「事前準備」や「予め計画する」文化が日本と異なることを理解しておく必要があります。


業務範囲の違い(日本:空気主義 vs. ベトナム:文書主義)

日本では契約書に記載がなくても必要に応じて業務を任されることが多いですが、ベトナムでは基本的に契約書に明記された業務しか担当しません。


給与の透明性

ベトナムでは給与を同僚同士で共有する文化が根付いています。日本では個人情報として守られることが一般的ですが、ベトナムではオープンに話されるため、給与設計の際にはこの点を考慮する必要があります。


このように、日本とベトナムの労働文化の違いを理解し、現地に適した採用・マネジメントを行うことが成功の鍵となります。



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2. 人材採用に関わる重要事項

ベトナムでの拠点設立時には、ゼロから人材を雇用し、組織を構築していく必要があります。しかし、場当たり的に「業務が増えたからこの部門を作ろう」と進めるのではなく、初期段階から「どのような組織を作るか」を明確にし、必要な人材を計画的に確保していくことが重要です。


本章では、人材採用の流れとポイント、特に経理・人事部門の採用に関する重要な視点について解説します。


2-1. 人材採用の基本的な流れ

進出時の人材採用は、以下のような流れで進めるのが理想的です。


進出時の人材採用のおおよその流れ


① 組織図をイメージする

➡ 進出後1年~3年の組織図を具体的にイメージする(人数、部署)


② 必要部署を図にする

➡ 初めから必要な部署を決め、途中で新設する部署を明確にする


③ 各部署の業務をリスト化する

➡ 日本での各部署の業務内容を参考にする


④ 募集要項をつくる

➡ 組織全体のバランス(年齢、給与、役職等)も考慮する


⑤ 募集をかける

➡ 人材募集サイト、人材紹介会社、工業団地の掲示板などを活用する


⑥ 選考手続きの管理

➡ 書類選考、面談などを進める


⑦ 採用(雇用)

➡ 試用契約書、労働契約書、就業規則等を事前に準備しておく



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2-2. 1年後・3年後を見据えた採用計画の重要性

採用計画を立てる際の最も重要なポイントは、進出時点だけでなく、1~3年後の会社の売上規模や組織体制を具体的にイメージすることです。


未来からの逆算思考

黒字化には、初期の工場規模、生産設備、人員配置などを考慮し、事業計画に基づいた適切な人材採用が必要です。


例えば、1年後に従業員70名規模を目指す場合、製造リーダーや品質管理、総務・経理・人事などの管理部門を含め、どのポジションに何名必要かをあらかじめ想定することが求められます。


1~3年後にどのような組織になっているかを想定して採用を進めることが重要ですが、具体的な経験や全体のイメージがないと、なかなかピンとこないかもしれません。「採用計画は現地での売上次第だ」と考える方もいるでしょう。しかし、日本本社ですでに同様の事業を展開している場合、おおよその組織規模はイメージしやすいはずです。


ベトナム進出直後は手探りの状態が続きがちですが、採用を最低限の人員確保にとどめるのではなく、1~3年後の会社全体の姿を考え、それに必要な人材を先んじて確保することが重要です。現地の実態が把握できずイメージが湧かない場合は、現地の専門家の協力を得ることで、より具体的な組織計画を立てやすくなります。


また、逆算して将来確実に必要となる人材や部署を事前に整えておくことで、組織の成長をスムーズに進められるというメリットもあります。計画的な採用によって、長期的な経営の安定につなげることができるでしょう。



例:会社設立時と1年後の組織人数内訳の変化


例:進出からちょうど1年後の組織図イメージ





2-3. ベトナム人の経理・人事採用のポイント

ベトナムで日本人担当者が現地の経理・人事を採用する際、適切な人材を選ぶためにはいくつかの重要なポイントがあります。特に、採用担当者が海外拠点の設立や管理経験がない場合、業務内容や必要なスキルレベルを適切に判断できないことが課題となります。


採用担当者が直面しやすい状況と課題

① 採用担当者の状況
  • 海外拠点の設立や管理経験がないため、経理・人事の具体的な業務内容を理解していない

  • 自身に経理・人事の専門知識や管理経験がないため、求める人材のスキルレベルや適正な採用条件を設定できない

② 採用担当者の不安要素
  • ベトナムでのお金の管理に対する不安

  • 海外特有のトラブル(会計処理の違い、税務対応、労務管理)についての情報が少なく、適切な判断が難しい

③ 採用担当者のよくある決定傾向
  • 「日本本社と同じ形態で運用すれば問題ない」と考えがち→ 給与計算を外部委託し、社内に経理担当者を配置しない

  • 経理業務を会計コンサルタントに任せる方針を選ぶ→ 小規模な組織では、記帳代行や税務申告を会計コンサルに依存するケースが多い



経理・人事担当者の採用時に検討すべきポイント


ベトナムで経理・人事を採用する際には、「将来的な会社規模」と「税務調査への対応」を考慮することが不可欠です。短期的な業務処理だけでなく、企業の成長やコンプライアンスを見据えた人材採用が求められます。


① 目指す会社規模の明確化

  • 進出後、どの程度の売上・事業規模を想定しているのかを明確にする

  • 将来的な事業拡大を見越し、組織の成長に適した体制を整える


② 経理部門のチーフアカウンタントの役割

  • ベトナムでは、企業の財務を管理する**「チーフアカウンタント」**の設置が義務付けられている

  • 会計・税務を外部委託する場合でも、社内に一定の知識を持つ人材を確保することが望ましい


③ 税務調査対応の責任者を決める

  • ベトナムでは税務調査が頻繁に行われるため、誰がどのように対応するのかを事前に決めておく

  • 税務調査対応を外部に完全に依存せず、社内で知見を持つ人材を育成することがリスク管理の観点からも重要


ベトナムでの事業規模拡大を考えると、経理・人事の税務調査対応は外部任せではなく、自社で対応できる体制を整えることが理想的です。そのため、進出直後から経理・人事の担当者を社内で採用し、段階的に育成していくことが望ましいと言えます。



採用時の人材選定ポイント① – 試用期間を活用した実務評価

履歴書や面接だけでは、候補者の実務能力を正確に判断することは難しく、試用期間を活用して見極めることが重要です。日系企業の勤務経験があっても、企業規模や業務範囲によって実際のスキルレベルには差があります。また、「税務調査対応の経験がある」といっても、ローカル企業での経験が外資系企業で通用するとは限りません。


大卒の場合、試用期間は通常2ヶ月間であり、この期間内に実際の業務スキルや適性を判断することができます。履歴書や面接時の印象と実務能力にギャップがあることも少なくないため、試用期間中に業務を通じて適性を見極め、雇用継続の可否を慎重に判断することが重要です。万が一、スキル不足や勤務態度に問題があれば、試用期間内で契約を終了する方が、長期的に見て企業のメリットとなります。


採用時の人材選定ポイント② – 合格ラインを設定し、育成を前提に採用する

採用時に理想的な人材を探しすぎると、条件に合う人が見つかりにくく、採用までに時間がかかることがあります。そのため、最初から厳しく条件を絞るのではなく、一定の合格ラインを設け、それを満たした人材を採用し、教育によって育てる方が効率的です。


また、時間をかけて採用した結果、期待が大きくなりすぎたり、解雇しづらくなるケースもあります。採用後は、人事担当者が業務の詳細を整理し、各部門や担当者ごとの役割を明確にすることで、教育の方向性を定めやすくなります。さらに、査定や評価の基準を作成することで、適切な育成が可能になり、組織全体の成長につながります。





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